外国人の訪問介護解禁で、果たして本当に人手不足は解消されるのか?
訪問介護が解禁となる背景には、人手が不足しているという現状があります。
しかし、制度の改正案を見てみると、人手不足を解消するというニーズには応えられないような制度になっている可能性が高いです。
この記事では、当社の見解をまとめましたので、最後までお目通しいただければ幸いです。
まず始めに、訪問介護(訪問系サービス)解禁の背景についてです。
改正の背景

人手不足が問題となっている介護業界において、2024年6月26日に発表された「外国人介護人材の業務のあり方に関する検討会(中間まとめ)」において、訪問型サービスへの従事が解禁される方向で検討されています。
訪問介護の有効求人倍率が高い現場や関係団体等からは、早期の施行を求められており、特定技能外国人の訪問型サービスへの従事を可能とすべく、所要の改正を行う必要があるとされています。
また、分野別運用方針の修正では「特定技能、所属機関は、介護職員初任者研修課程等(※)を修了し、実務経験等を有する1号、特定技能外国人のみを訪問介護などの業務に従事させること」が明記されました。
(※)訪問型サービスの従事にあたっては、実務経験が1年以上ある外国人介護人材を原則とする。
つまり、訪問介護において外国人人材を活用する条件としては、
「介護職員初任者研修の修了+1年の実務経験が必要になる」ということです。
現行の特定技能制度とは違い、外国人材が入国して訪問介護の業務に就労することができず、施設で働きながら、初任者研修を受け、1年経過をすればに訪問介護に従事できる。という流れとなっていきそうです。
また外国人の人材は、入国してからある程度職場の環境などに慣れる期間が必要になるため、入国後すぐに初任者研修が受けれるわけではないのが現実的な問題です。
改正のポイントについて
訪問系サービスの解禁にあたり、改正のポイントと当社の見解について解説していきます。
- 特定外国人の訪問系サービスへの従事を認める
- 訪問型サービスに従事することができるのは、介護職員初任者研修課程等を修了した外国人のみ
- 受け入れる法人は、一定の事項を遵守する必要がある
訪問型サービスへの従事が解禁される
❶「特定外国人の訪問系サービスへの従事を認める」
厚生労働省が「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」を立ち上げて議論を行ったところ、昨年6月に公表した同検討会の中間まとめでは、一定の条件の下で訪問系サービスへの従事を認めるべきとの結論がなされました。

海外から来る外国人が、即戦力として働けるわけではない
❷「訪問型サービスに従事することができるのは、介護職員初任者研修課程等を修了した外国人のみ」
訪問型サービスに従事することができる外国人は、介護職員初任者研修課程等を修了した者が条件となります。
- 問題点
初任者研修は、現状日本でしか受けることができません。したがって、基本的には国内にいる外国人が対象となります。もしくは訪問系ではない介護施設で、初任者研修が終了した人たちが、訪問系サービスに従事していく流れとなります。
「集中的に取り組んだとしても、1ヶ月は要する研修の時間をどう捻出するのか?」
また現状では、介護職員初任者研修課程「等」←に何が含まれるかが、明記されておりません。いずれにせよ、初任者研修のタイミングが課題となりそうです。
訪問介護解禁といえど、「初任者研修を受講しながら、どうキャリアを作り、どこの施設で働いてもらうのか?」を考慮する必要があります。
したがって、「新規で訪問介護に従事する外国人は、なかなか増えない」というのが当社での見通しです。
受け入れる法人は、次の事項を遵守する必要がある
❸「受け入れる法人は、次の事項を遵守する必要がある」について、詳細は下記のとおりです。
すでに訪問介護の施設では導入されているところも多く、この点がハードルになることは少ないでしょう。
- 1号特定技能外国人に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと。
- 1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行するなどにより必要な訓練を行うこと。
- 1号特定技能外国人に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行い、その意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること。
- ハラスメント防止のために、相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること。
- 1号特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する現場において、不測の事態が発生した場合などに適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと。
結論・まとめ
訪問介護解禁といえど、実際には運用の難しさがあることでしょう。
日本ですでに介護に従事していて、初任者研修も終了している外国人にとっては解禁となりますが、次の問題点を考慮する必要があります。
「現在働いている施設型の介護施設と、訪問系サービスで、労働条件がどちらが良し悪しか?」

訪問系の労働条件の方が良ければ必然と、解禁と同時に人手が流れますが…
在留資格介護において、積極的に訪問系へうつる流れはほとんどないのではないか?というのが当社の見解です。
「訪問型サービスに従事することができるのは、介護職員初任者研修課程等を修了した外国人のみ+1年間の実務経験」という条件があるために、解禁しても、訪問介護において人手が足りないままの状態であることが予測されます。
また、日本で既に介護に従事している外国人にとって、労働条件が介護施設よりも魅力的でなければ、訪問介護へ外国人人材は流れていかないでしょう。
この問題を解決してく方法として「訪問介護では介護施設よりも賃金を上げていく」という対応を視野に入れなければなりません。
外国人の訪問介護解禁は、現状では「訪問介護も行う、複合的な介護施設」では対応がききそうですが…
利用者の人生に寄り添い、安心を届ける仕事であるが故に、「訪問介護の外国人材の活用は、実際にはじわじわとしか進んでいかない。」というのが当社の見通しです。